『 認知症空間認知障害朝の着替えに5時間 』

  2019年10月1日   中山 明俊



 今『ゆかいな認知症』奥野修司著・講談社現代新書を読んでいる。
 認知症にはいろいろな症状がある。記憶力が減退するもの、幻覚を見るものなど、その中に「空間認知障害」というのがある。その症状の特徴は頭の中に「立体空間」が描けないという障害である。この症状になると服を着ることができない。袖がそこに見えていても手を通すことができないという。
 著書の記述によると「着替えに5時間 3次元の世界と格闘」という見出しの章がある。「う〜ん、こっちの袖口はどこにあるのかな? 目印がここだから、方向はこれでいいはずなんだけどね。いえ、目が悪いんじゃないんですよ。袖口が探せないんです」とある。
 悪戦苦闘しながら20分ほどして何とか通せたが、それでも普段と比べたら超がつほど早いのだという。
 着衣に5時間かけていたらベッドから寝室を出るのに半日かかってしまう。大変な努力である。5時間かけていたら、着衣を始めたのは何のためだったか忘れてしまわないか?
 脱ぐのは5分でできるのかな。
 そして一つのことを5時間もかけて完遂する努力、その粘り強さを評価すべきかもしれない。
 以前に訊いた話では、認知症の人は衣類など、見えていないと、いけないそうな。タンスにしまいこんだら、もう全く見つけられない、という。だから居室には衣類が散らばって、いっぱい置いてある。
 著書の記述にも、タンスの引き出しに『閉めないでください』と書いて貼ってあると。
 記憶力の減退については、健常者も高齢になると物忘れが多くなる。健常の人は、忘れても何かのきっかけで思い出すものであるが、認知症の人は忘れたら、記憶から消えてしまっている。もう真っ白になって、思い出すことができないという。
 そういえば、私も物忘れがひどくなってきた。必要があって居室から別の部屋へものを取りに行くと、ものを取りに行った先の場所で何を取りに来たか忘れてしまうことがよくある。仕方がないから、その用件を思い出すため、取りに行くときの元の場所に戻って用件を思い出すよう試みることが多い。
 物忘れと認知症、明確な区切りがあるようだが、物忘れが連続して徐々に認知症に近づいていくようにも感じてくる。

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