『 健康を指導する医師たちの怠慢 』

2017年11月23日  中山 明俊



 昨年3月から4月にかけて経済学者の怠慢というタイトルで投稿した。経済学者は景気 停滞についてもっと政策提言を出すべきだというものであった。では今回は『 医者たちの怠慢 』である。
 11月15日のNHKガッテンの放映で悪玉コレステロールよりももっと悪玉のコレステロールが存在したことを25年も前から分かっていたのに、世の医師たちは健康指導をしなかった、というものである。

 この超悪玉コレステロールとは、健康診断表の総コレステロールから善玉コレステロールと悪玉コレステロールを除いた残余のコレステロールというもので、大した数字でないコレステロールでないから考慮の外と切り捨てていたものであるが、その悪性度(動脈硬化に至る可能性)は悪玉コレステロールの4倍という。そしょて、健康診断では総コレステロールも善玉コレステロールも悪玉コレステロールもすべて正常値であるというのに、 この残余のコレステロールと悪玉コレステロールを合算すると十分に要指導、要治療の領域だと言いうのである。

 放映の数字では、
   総コレステロール    156 mg/dl
HDLコレステロール   62
   LDLコレステロール   84    62+84=146
   残余のコレステロール   10
    ★10mg/dlのコレステロールを足さないと156mg/dlならない




」これすてろーるで、放映の内容は人工知能によって2020年そしてその先のニッポンの未来に提言を得ようとするもので、標題の他には
 「健康になりたければ病院を減らせ」 
という提言もあった。
 この解析をした人工知能には、国や民間企業、研究機関が持つ、経済・医療・社会・生活分野のデータ、30年分700万個さらに1万5千人の10年以上の追跡データなど、日本人の行動パターンや価値観まで学習させました、と7月22日のNHKスペシャルで放映していた。
 そして、なぜ、そのような提言が言えるのかといった因果関係や関連性の説明はできないという。ただ、関係付けられるデータ項目は若干のウエート付けをして示すことができるという豆細工の構造を画像で示していた。
 「健康になりたければ病院を減らせ」
については、北海道の夕張市は10年ほど前に財政破たんし、総合病院の病床数が1/10ほどに縮小された。すると市民の間では病気にもなれないと健康体操などのサークル活動が盛んになり、肺炎死亡率、がん死亡率、心疾患死亡率が大幅に低下した事実がある、と説明していた。
 そうではあっても、この「病院を減らせ」という提言から、意図的に病床数を減らして、医療費のカットを図るような施策は取れないが、自分たちで健康を守る努力をすれば、医療費予算を効率的に使う方法はあることが分かったといえるのかもしれない。

 では本題の「40代一人暮らしがニッポンを滅ぼす」はどう解釈したらいいか。「40代ひとり暮らし」は人口の2%、249万人しかいないのに日本の未来に与える影響は大きいという。40代ひとり暮らしの人が急に2倍になるとは思いにくいが、もし2倍という状況を想定すると、空家は27%増、餓死者は49%増、合計特殊出生率12%減になるという。
 現在、都市部の住宅供給はひとり暮らし用の住宅が非常に多いという。その傾向は40代ひとり暮らしの人のために作っているのではなく、一人暮らし用の住宅の方がコストパフォーマンスがいいという理由からではある。
 そして、40代一人暮らしの人を減らすには、1坪あたりの家賃を1000円下げれば、38万人(15%)減る、と人工知能は答えを出している。
 わずか1000円でそんなに効果があるのか?
と思うが、実は錯覚である。1坪の家に住んでいるのではなく、一人暮らしでも6坪から8坪の家に住んでいるだろう。そうすれば、5万円前後の家賃が4万3千円ぐらいになるのだからひとり暮らしの人が15%減になるのならば納得できる。
 ここまで話題を追いかけても、どうして40代ひとり暮らしが日本を滅ぼすことになるかについては、少しも明らかになっていない。しかし、新しい視点から考えるための着想のヒントになることだけはメリットだろう。しかも、あまりにも突飛な提言であればあるほど議論の余地は多くなるといえるかもしれない。

 そしてさらに、人工知能の出した結果だから、結果の文言について合理的な因果関係などは明解に説明できないといった無策な利用方法を楽しんでないで、人工知能を活用するうえで、関連あると人工知能が指摘するデータ項目の数値をピックアップして、その絞られた10数個ほどの系列数値を改めて「主成分分析」などの多変量解析にかけるなどして徹底した検討をすすめれば有効な指針が見えてくるのではないかと考えるがいかがだろうか。  


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